生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード(仮称)(案)に関する意見

2026年1月27日 カテゴリー:お知らせ

内閣府では、AI 時代の知的財産権検討会の審議を通じて、
生成 AI と知的財産権等との関係をめぐる懸念やリスクへの対応の推進に向けて、
生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード(仮称)(案)に
関する意見を募集があり、音楽ユニオンでは以下の内容を提出しました。

内閣府に掲載の意見募集の資料は以下から確認ください。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/ikenboshu_20251226.html

 

「生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関する
プリンシプル・コード(仮称)(案)」に関する意見

【提出者】 日本音楽家ユニオン

【意見①:総論(P1~3)】
私たち日本音楽家ユニオンは、著作隣接権を含む権利者の財産権・人格権の尊重に立脚したAI技術との共生、およびそれに伴う新たな表現の探求を基本スタンスとしています。技術を用いた新たな表現を模索する音楽家の挑戦をAIが阻害するのではなく、むしろその歴史に正しく連なる存在であることを願い、以下の通り意見を述べます。

プリンシプル・コード(案)において、AIは単なる「効率的な生成ツール」として定義されるべきではありません。AIもまた人間と共に「文化の継承に参加する一員」であると明確に規定されるべきです。
作品や実演の背後にある先達から受け継がれた技術の重みを尊重し、文化の持続可能性を損なわないよう配慮する責任を負うものとして、以下の理念を盛り込むことを強く求めます。

1)実演の「古層」への敬意
AIが学習するデータの背後には、脈々と受け継がれてきた技法や精神の蓄積(古層)が存在します。これを単なる「情報」として消費するのではなく、一つの「文化」として尊重する姿勢を事業者に求めます。
2)著作隣接権(実演家)の独自性
実演データの学習は単なる情報解析(著作権法第30条の4)の枠に留まるものではありません。実演の魅力をとり込む行為は「表現の享受」に他ならず、本来は許諾を要する領域です。
「誰の演奏か」という人間性の核心に踏み込むAIの特性に鑑み、著作権とは別に、実演家の権利を守るための透明性と開示を求めます。
3)個人クリエイター・フリーランスへの配慮
資金力のある組織のみならず、個人の音楽家が不当な収奪を危惧することなく、安心してAIと共創・探求できるような心理的・事務的ハードルの低い照会・対話の仕組みを求めます。

 

【意見②:原則1 透明性確保(P4~5)】
本コードがソフトローであるがゆえに、技術的措置や海賊版対策が理念的な表現に留まることは理解しております。しかし、これらを実効性あるものとするため、以下の具体的提案をいたします。

1)「回避」基準の明確化
エクスプレインの指針として、政府や権利者団体が提供する悪質サイトリストを学習から除外しているか等、具体的な基準を示すべきです。
2)フィルタリング情報の可視化
既存楽曲との類似度による出力抑制の設定値など、アルゴリズムの挙動を可能な限り透明化することを求めます。
3)検証技術の統合的運用
出所証明技術(電子透かし、C2PA等)を単なる「推奨」に留めず、権利侵害が疑われる際の「技術的な照合手段」として機能させるべきです。
4)実演の海賊版(AIカバー等)への対応
メロディの模倣だけでなく「声や演奏スタイル」を不当に再現させるプロンプトや、それを助長する学習データの選別についても技術的抑制措置の対象に含めるべきです。

なお、これら透明性確保の姿勢こそが提案文書P10のインセンティブ評価の核となるべきであり、その評価過程には音楽家・実演家団体の意見を反映させる仕組みを導入することを提案します。

 

【意見③:原則2 権利保護(P6~7)】
「コンプライ・オア・エクスプレイン」の手法下では、「営業秘密」等の理由により開示が形骸化する恐れがあります。また、照会対象が「容易にアクセス及び確認可能なもの」に限定されている点は、膨大なデータセットを前にした権利者にとって大きな障壁となります。
特にフリーランスの音楽家にとって訴訟準備の証明等の要件は極めて重い負担であり、原則2が有名無実化しかねません。権利者が対照情報を提示した場合には、事業者の責任として、そのデータが学習に含まれているかを照合する技術的努力を「容易にアクセス可能な範囲」に含めるべきです。

 

【意見④:原則3 生成物の照会(P8~9)】
本原則は、利用者が意図せぬ侵害を回避し、安心して作品を発表するための有効な手段となり得るものです。
また、自身の演奏スタイルが再現されていると感じた際に、学習の有無を問うきっかけとして機能する可能性があり、この方向性を高く評価します。

 

【意見⑤:原則1~3に対する例外(P10)】
創作者として責任あるAI利用を実現するためには、事業者の透明性は不可欠であり、安易な例外規定の設置には反対します。
オープンソースソフトウェア(OSS)を利用して商用サービスを展開する以上、その学習データの出所や権利侵害リスクを調査することは事業者の当然の責務(デューデリジェンス)です。調査の不備を「困難」という言葉で正当化し開示を免除することは、実演家が自らの財産(作風や音色)を確認する手段を奪うことに他なりません。OSSを利用する事業者であっても、学習データの傾向や元モデルの特定情報を報告する義務を課すべきです。
AI事業者が技術的な提供物(いわば借りもの)と称して利用しているOSSの背景にあるものは、私たち音楽家が人生をかけて紡いできた「魂」であり「財産」です。その責任の鎖を断ち切る例外規定は、文化の継承に対する誠実さを欠くものであり、断じて容認できません。
OSSを隠れ蓑にした責任逃れを許さず、クリエイターへの敬意と責任を引き継ぐ仕組みこそが、日本の文化芸術の土壌を守る道であると確信します。
以上

 

「生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関する
プリンシプル・コード(仮称)(案)」に関する意見

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